2016.03.17

テナント設備の落とし穴。ガス容量が足りず出店できない?!

ガスメーター

こんばんは。辻です。本日は飲食店では特に重要になってくる「ガスの容量」をテーマにしたいと思います。

ガスの容量を気にされたことはありますか?

今、ちょうど契約を進めて頂いている飲食店の案件で、「ガスの容量が足りない」かもしれないという問題が出てきました。そもそも飲食店を想定して建てられたビルではなかったためです。

言われてみればガスの容量に制限がある、というのは至極当然のことですが、日常普通に生活している範囲ではあまり気にしないですよね。

ガス容量が問題となるケースは3パターンあります

ガス容量の問題⇒ガスが思うように使えない、と言い換えると原因は3パターンが考えられます。

①ガス機器の容量

例えば、ガス給湯器を考えます。ガス給湯器には”号数”という規格があり、”1号”は1分間で1Lの水の温度を25℃上げられる能力という定義です。2号になると2倍、3号になると3倍と性能が上がります。

ガス給湯器

実際に販売されている給湯器は、10号、16号、20号、などがあり、4人家族で不自由なくお湯を使うためには24号が良いと言われます。24号は定義に従えば、1分間で24Lの水の温度を25℃上げられる、24分の1分間(2.5秒)で1Lの水の温度を25℃上げられる、30秒間で10Lの水の温度を30度上げられる、などといった能力です。

つまり、号数をx、水の体積をS(L)、上げる温度をT(℃)、かける時間をm(分)とすると、

x=(S×T)÷(25m)

この(S,T,m)の関係がその号数の給湯器の限界なので、それを上回るとお湯が出なくなります。そういった場合は基本的には給湯器を交換し号数を上げるか、給湯器を増設することで解決可能です。

②テナントビルなどでの割り当て

建物には原則として、一本の供給管からガスが引込まれています。テナントビルや集合住宅ではそれを分けて使います。

ガスメーター

ガス管は道路の下などを通っており、建物敷地内で地上に出て、建物(専有区画)に入る前にガスメーターが付いています。写真は2つメーターが付いていますので、2区画にガスを分岐していることが分かります。

このメーターにも”号数”があり、(給湯器の号数とは違うのでややこしいのですが・・)1号は都市ガス(13A)の場合、1時間当たり約1万Kcalを消費できます。ちなみに先ほどの給湯器の1号は1時間当たり約1,500Kcalを消費するので、1号メーターが付いている場合、給湯器は6号まで使える計算になります。

実際のガスメーターは2号、4号、5号・・などがありますが、給湯器、ガスコンロ、ガスレンジ、オーブン、ガス暖房、ボイラーなど多くのガス機器を使う場合、割り当てられているメーター(=最大消費量)で容量が足りるかどうかの問題が出てきます。もし足りなければ、メーターをより大きな号数に交換するか(他の区画との兼ね合いもあるので、すんなりOKが出るとは限りませんが、)、ガス機器を電気機器へ代替する必要があります。

③本管からの引込み

一般にガスの経路は、道路に埋設されている本管から供給管が分岐し、ガスメーターを通って各ガス機器に繋がっています。

上記、②のケースで各区画への割り当てが既に限界でそれ以上割り当ててもらえないという場合には、本管からの引込み管を交換する必要があります。ただし、一般的に引込み管のうち、道路埋設部分はガス会社の負担で交換してもらえますが、敷地内については所有者が負担することになり、費用が相当かかってしまうため、現実的にはほぼありえません。どうしてもという場合は借主側の負担で行うことになります。また、それほど費用をかけるぐらいなら、ボンベの設置場所さえ確保できればプロパンガスを使用するという方が現実的です。

なお、ガス管の名称は以下のように分けられています。

本管・・・道路に埋設されており、口径100mm以上のもの

支管・・・道路に埋設されており、口径80mm以下のもの

供給管・・・本支管から分岐して、利用者の敷地に引き込まれる配管のうち、敷地境界線までのもの

灯外内管・・・敷地境界線からガスメーターまでの配管

灯内内管・・・ガスメーターからガス器具までの配管

ガス・電気・水道の容量には注意しましょう

テナント探し、特に飲食店をされる場合には、物件の立地・広さ・賃料・保証金など表面的な条件が適っていても、こういった設備面での確認が出来ておらず、予想外の出費があるケースがあります。

そうならないためにも、なるべく明確に店舗のイメージを持ち信頼できる工務店と不動産会社に入ってもらって、開店までお互いに協力して準備していけることが理想だと思います。

他にもテナント物件の賃貸借には、入居時の引渡し状態、退去時の明渡し状態、融資条件、解約予告期間など、あまり目立たないですが重要な確認事項がたくさんあります。

私もまだまだ勉強中ではありますが、今後もこのブログでこういった注意事項のご紹介をさせて頂きたく思っています。

こちらもおすすめ