2015.12.15
このブログをご覧の方なら、実際にテナント契約に携わったことがある方が多いと思います。
飲食店を多店舗展開されている社長様、ナショナルチェーンの店舗開発担当者の方など
でしたらこれまでに数十回もテナント契約を経験されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、普通はテナントの契約などそうそうするものではありませんし、生涯を通じて経験しない方の
方が多いはずです。
そういった方のために、本日はテナント契約における事務的な注意点をご紹介させて頂きます。
大まかに留意しておくポイントが「契約書」、「必要書類」、「契約金」です。
最終的にこれらが揃って初めて契約が成立します。
テナント契約において、最も重要な書類が契約書です。
「賃貸借契約書」「建物(土地)賃貸借契約書」「事業用建物(土地)賃貸借契約書」など
呼称は様々ありますが、同じものです。
また、契約形態によって、「普通建物賃貸借契約書」「定期建物賃貸借契約書」があります。
「普通」の場合は特に気にしなくても良いのですが、「定期」の場合は借主側の権利が大きく
制限されることになるので十分注意して頂く必要があります。
当然、契約に至るかなり早い段階で、オーナー様または不動産業者から説明があるものですが、
「定期」と「普通」では賃貸借契約の質そのものが全く異なっています。
普通賃貸借契約では、原則として借主側が契約の更新を希望する限り、契約はずっと継続されます。
契約の終了は、1.借主からの解約、2.重大な契約違反、3.賃貸借の対象物(建物等)の滅失、
4.正当事由による貸主からの解約に限られます。逆に言えば、これら以外では契約は終了しません。
1.借主はどういった状況でも一方的に解約を通知できます。ただし、解約期間というものがあって、
予告してから法定で最大6ヶ月間は契約が継続し、賃料が発生します。またはその賃料相当額を支払って、
即時解約も可能です。テナントの場合は解約期間は3ヵ月か6ヶ月が一般的です。
2.重大な契約違反とは、賃料の不払い/滞納や用途外使用、事前承諾の無い改装、
その他信義誠実に反する行為などで、貸主と借主の信頼関係が破壊されたと判断されるケースです。
賃料の不払い/滞納については、一般的な判断基準としては滞納賃料が3ヵ月を越えた場合とされています。
また、アパレルの物販店として契約していたのに突然携帯電話の販売を始めたとか、飲食店にしてしまった。
貸主の承諾を得ず、店舗内外装を大幅に変更してしまった。
貸主の再三の注意を無視して、近隣に迷惑の掛かる営業を続けている、といったケースが該当します。
ただ、こういったケースは話し合いで契約解除となるのは稀で、裁判沙汰になってしまうことが多いです。
逆に言えば、借主側は裁判で負けない限り、居座ることが可能ということが言えます。
3.地震・火災・津波など天災地変により建物自体が無くなってしまった場合は当然契約が終了します。
4.貸主からの解約には「正当事由」が必要です。「正当事由」は、かなり限定された場合にしか認められず、
具体的には、貸主が経済上の理由などで建物を自ら使用しなければ生計が立てられない場合、
建物の老朽化により取り壊しせざるを得ない場合、政令などにより建物の収去が決定した場合、
といったケースです。つまり、上記の理由に当たらない場合は貸主から解約を申し入れられても、
借主側は応じる必要はないということになります。
このように、「普通」賃貸借契約は大いに借主側の権利を保護しています。
これが、「定期」賃貸借契約になると、原則として契約期間が満了した時に契約は終了します。
これは貸主側にとっては、正当事由に当たらない理由でも契約を終了させられるという大きな利点があります。
逆に借主にとっては契約の継続を一存で決められないということになりますので、
初期に多額の投資が必要で、回収に10年かかる見込みだが、
定期契約期間が5年しかない・・といった場合は契約するべきではないと言えます。
契約の際には必ず本人確認等の添付書類が必要になります。
必要書類は貸主・借主・物件によって若干相違がありますが、
賃借人:住民票(法人の場合は履歴事項全部証明書)
保証人:印鑑登録証明書
その他、会社概要や免許証コピー、所得証明といったものが必要となります。
また、借家人賠償付き保険に加入していることの証明、
保証会社加入が必要な場合は、その契約書類も必要書類となります。
文字通り契約に必要なお金のことです。
不動産会社によって支払方法は異なりますが、弊社では原則として、
保証金、賃料など貸主に支払う金額は直接貸主口座に振込み、
仲介手数料は弊社口座に振り込み、保険料は保険会社から引き落とし、
保証会社加入料は弊社が一時お預かりして、後日保証会社に振込という方法です。
契約金を支払うことで、契約の履行に着手したことになり、
これによって賃貸借契約が完成します。
以上が賃貸借契約の大まかなポイントです。
特に契約書の内容に関しましては、貸主・借主双方の最低限の権利義務を押さえつつも、
その物件に応じた契約条項を組み入れ、さらに将来のトラブルを未然に防ぐための
事前協議事項が入っているものが理想です。
その作成には多少時間はかかりますが、後々の労力を考えると
しっかりした契約書をつくっておくのが肝要だと思います。
本日は辻が担当しました。