2016.04.15
こんにちは。辻です。
京都には不思議な地名、読めない地名がたくさんあります。
そして地名には必ず由来があるもの。本日は京都の怖~い地名をご紹介致します!
”天使を突き抜ける”とは何とも物騒な名称ですね。京都市下京区に実際にある地名です。
西洞院通(にしのとういんどおり)の一筋西に「東中筋通(ひがしなかすじどおり)」という通りがあり、その松原通から六条通にかけて、天使突抜1丁目、2丁目、3丁目、4丁目が並んでいます。
名前だけを聞くとどんな由来があるのだろう・・と恐ろしくなりますが、現在も付近に残る”五條天神宮”と”豊臣秀吉”が関係する地名です。
豊臣秀吉が京都を支配した当時、”五條天神宮”は今よりももっと広大な敷地がありました。秀吉はそれまでの京の町を大きく区画整理しましたが、この五條天神宮の敷地内に道路を通してしまいました。(おそらく現在の東中筋通かと思われます。)
五條天神宮の祭神である”少彦名命(すくなびこなのみこと)”は通称、天使様と呼ばれており、京の町の人々が秀吉の横暴な振る舞いを皮肉って、その場所を”天使突抜”と呼ぶようになったということです。
なお、”五條天神宮”は”天神”の名前は付きますが、菅原道真公とは無関係ということです。
悪王子とは・・いったい過去にどんな悪い王子がいたのか、と震えてしまいそうな地名です。
下京区、烏丸通の万寿寺通(まんじゅじどおり)と五条通の間に”悪王子町”、東洞院通(ひがしのとういんどおり)の四条通と綾小路通(あやのこうじどおり)の間に”元悪王子町”があります。
”悪”とは現在では、悪魔、悪性、悪党など良くない、不快なという意味合いのみが残っていますが、以前には、強い、勇敢なという意味があったそうです。
つまり、悪王子=強い王子、ということです。
さて、この強い王子とは誰なのか、というと素戔嗚尊(スサノオノミコト)の荒魂を指しています。素戔嗚尊とは伊弉諾尊(イザナギノミコト)の三子の一人で、天照大神(アマテラスオオミカミ)と月夜見尊(ツクヨミノミコト)の弟(?)です。
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治や、その横暴さによって天照大神の岩戸隠れの原因となったなど様々な武勇伝がある神様です。
現在は祇園、八坂神社にある「悪王子社」が、かつて悪王子町・元悪王子町にあったことが地名の由来ということです。
なお、京都にはこういった「~~町」「元~~町」のセットが多くあります。
千本通は以前”京都の通り名シリーズⅣ 南北の大通り「堀川通」~「葛野大路通」”でご紹介しましたように、京都の通りマニアには垂涎の通りであります。
かつて平安京の朱雀大路であり、京都市内北部の幹線道路であり、南北にすさまじく長い通りです。
ただ現在使われている”千本通”という名称には恐ろしい曰くがあったのです。
平安京造営の際には京の中心として位置付けられた朱雀大路(千本通)ですが、京都の地勢的に西側(右京)は湿地帯が多いため、発展しづらく、東側(左京)ばかりが発展していきました。平安時代中期には朱雀大路でさえ人家もまばらな土地になってしまい、お墓や風葬地(死体置き場)になってしまいます。
今も、お墓には墓石とともに卒塔婆(そとば)という供養のための木の板が並んでいます。
”千本”とはこの卒塔婆が延々と千本も並んでいる光景を指して名づけられたそうです。
京都市北区、千本通~堀川通、鞍馬口通~北山通辺りが”紫野”、その北部が”紫竹”と呼ばれます。
「紫」色は過去も現在でも、種々の地域でも高貴な色として位置付けられていることが多いのですが・・
ここで使われる”紫”は、なんと死体から流れる腐敗した血の色を指しているそうです。
紫野も紫竹も前述の”千本通”付近の地名であり、平安京の時代はこの辺りは風葬地という死体置き場だったのです。
風葬などというと、現代の感覚からすると死者に対する酷い扱いに思えますが、農業生産や流通の発達していない当時に、10万人以上といわれる人口が密集していた平安京。世界的に見てもそういう都市は稀だったはずです。
食料や疫病の問題もありつつ、死者の埋葬についても深刻な問題があったはずです。
現在は当然とされる火葬には多数の木材が必要で、当然京都周辺の山林だけで賄えるはずもなく、当時火葬は天皇など最高級の貴人しか行えなかったそうです。
土葬もそれなりの労力とコストがかかるため、自然にあるがままに死体を朽ち果てさせる風葬が主流になっていたのでしょう。
ちなみに近代まで沖縄の離島では実際に風葬の習慣が残っていたそうです。
歴史の長い京都には土地土地に様々な曰くがあります。
今は繁華街として賑わっている、河原町・木屋町・先斗町の辺りも牢獄や処刑場だったなど・・
阪急・京福「西院駅」、地下鉄「蹴上駅」にも怖ーい逸話があります。
そういった目で改めて京都の町を見てみると面白いかもしれません。
本日は辻が担当しました!